世界を魅了した旅情あふれる木版画を一挙公開! 東京都美術館『没後70年 吉田博展』をレポート
東京都美術館で『没後70年 吉田博展』が1月26日(火)に開幕した。明治、大正、昭和の時代に活躍した吉田博による木版による風景画は、日本のみならず世界でも人気が高い。彼の画業を振り返る展覧会は、3月28日(日)まで開催されている。
本展は、世界を旅し、その壮大な風景を木版画として発表し続けた吉田博(1876〜1950)の没後70年を記念した展覧会。彼の生涯を丁寧にたどっていくことで、きらめく光やゆらめく水の表現、複雑な色彩表現、卓越した描写力など、彼の魅力に踏み込んでいく。
吉田博は明治9年(1876)、福岡県久留米市生まれ。13歳で中学校の図画教師吉田嘉三郎に画才を認められ、14歳で吉田家の養子となり、京都や東京で写生に明け暮れる毎日を送っていた。初めて海外に渡ったのは23歳のとき。
当時、黒田清輝ら白馬会メンバーが勢力を強め、国費でフランスに留学していることに吉田は反骨心を覚えたようだ。
吉田博《穂高山》
自費でまずアメリカに渡り、現地で風景画を描き、売ることで旅費を稼ぎ、数年かけて欧州を巡ってから帰国する旅を連続して行った。吉田が海外で培った技術は高い評価を受け、太平洋画会や官展などに入選、頭角を表していた。