2023年8月14日 12:00
【おとなの映画ガイド】デビュー60年、藤竜也の魅力があふれ出る『高野豆腐店の春』。舞台は尾道。
(C)2023「高野豆腐店の春」製作委員会
藤竜也の新作『高野豆腐店の春』が、8月18日(金)に公開される。デビュー60年、81歳を迎える藤。5月の『それいけ!ゲートボールさくら組』に続き、主演作がなんと今年2本目。本作は、映画の“聖地”尾道を舞台にした人情ドラマ。巨匠たちの名作を思い起こすシーンもある、懐かしい味わいの日本映画だ。
『高野豆腐店の春』
瀬戸内海に臨む尾道の俯瞰、海を背景にした大きな灯籠のショット、踏み切りを通りすぎる列車、通学中の子どもたち…。お、これは小津安二郎の『東京物語』や、大林宣彦の『転校生』へのオマージュではないか。
そして主人公の高野辰雄の職業が豆腐屋。
小津監督の「私は豆腐屋のような映画監督」という名文句を連想させる。『お茶漬の味』は小津作品。素朴そのものの本作は、お醤油をたらりとさして冷や奴、が絶妙の、まさに「お豆腐の味」の趣きだ。
タイトルは、高野(こうや)豆腐、ではない。高野さんちのお豆腐。「春」はこの店の看板娘、父と豆腐店を切り盛りする娘の名前だ。その高野豆腐店の春、とは、この家に春が来る、何かいいことがありそうな予感も匂わせる。
三原光尋監督と藤竜也はコンビ3作目。