尾上菊五郎「とにかく“仕事”が多くて気が抜けない役」 五月大歌舞伎で演じる早野勘平を語る
舅を死なせた申し訳なさよりも、何とかして討入に加わりたいという侍としての気持ちの方が重い」。
そして勘平は切腹するが、舅殺しの疑いも晴れ、死ぬ間際に討入の連判状に血判を押すことを許される。
「最後まで、おかるにはこのことを言わないでくれ、言うと世の中にこの企てが知られてしまうと頼んで死んでいく。そこが勘平が『忠臣蔵』の忠臣たるところだと思います」。
決して発散できない大変な役、だが若い頃ずっと憧れていた役だったとも。
「やはりやりがいがありますので、お軽を勤めていた頃から勘平のしぐさをずっと見ていました」と懐かしそうに語る。教わったのは二代目尾上松緑から。
尾上菊五郎
「松緑のおじからは、与市兵衛の遺骸が運び込まれてからはずっと下を向いていろと言われましたが、私はどうにもそれができなくて。
おかやや猟師仲間の台詞を聞いていくうちに、ああやっぱり自分が殺ったのかとなっていく、そういう芝居がしたい。勘平が茣蓙(ござ)を巻くくだり、あれも初めの頃はなぜここでそんなことをするのだろうと。でも、とんでもねえことをしてしまったと肚から思えると、手が自然に動いて茣蓙を巻けるんです。まあいずれにしても、五代目菊五郎という人は本当に物を片付けるのが好きなんでしょうかね(笑)」。