尾上菊五郎「とにかく“仕事”が多くて気が抜けない役」 五月大歌舞伎で演じる早野勘平を語る
切腹にも口伝があるという。
「“懐にいがぐりを入れているようなつもりで”声を張らずにと。切腹の痛みは栗のいがぐり程度では済まないと思いますが(笑)。また(『義経千本桜』の)いがみの権太は切腹の時に足の親指を動かして辛さを表わしますが、勘平は侍なので指は動かしちゃいけないとかね。昔の人の口伝とは面白いものですし、いろいろ残っています。でもそれだけでは足りない。やはり自分で考え、自分の肉体に合わせた工夫が要るんです」との言葉に菊五郎の矜持が凝縮されていた。
歌舞伎座『五月大歌舞伎』チラシ
コロナ禍で稽古もままならない困難な日々が続く。
だが若い芽も育ちつつある。
「孫の(寺嶋)眞秀が『土蜘』で太刀持ちを、『鏡獅子』では(尾上)丑之助が(坂東)楽善さんのお孫さんの亀三郎君と胡蝶を勤めます。子供の頃に楽善さんと胡蝶を勤めたことを思い出しますね。大変な時代ですが力を合わせてこの興行を成功させたいと思います」と結んだ。
取材・文:五十川晶子
歌舞伎座『五月大歌舞伎』
2021年5月3日(月・祝)~2021年5月28日(金)
会場:東京・歌舞伎座