新鋭・五戸真理枝の演出で『どん底』がどう現代に息づくか
を観劇した小川がその現代アレンジを気に入り、今回の抜擢へと至ったのだとか。
「『舵』も畳敷きのリアルなセットで着物を着て上演されると思われがちな演目なんですけど、私の場合は、いかにそういうことを排除できるかをまず考えるというか。戯曲には忠実なんですけど、全く違う場所に置き換えてみたり、見た目をすごく変えようとする演出をすることが多いです」
今回も、原作では木賃宿に暮らす登場人物たちを、解散した劇団の元劇団員たちに置き換える。
「二重構造を使います。解散したので劇場や稽古場が借りられない人たちが、仕方なく工事現場のようなところを勝手に借りて“ここで『どん底』稽古しよう”みたいなノリでやっているという設定。衣裳もジャージだったりしますし」
脚本も、この舞台のために新たに訳されたもの(安達紀子訳)を用いる。
「哲学的な言葉が多い戯曲と思われていると思うんですが、描かれているのは普通の生活の断片。なので、もっと生活の中の言葉に落とし込めるんじゃないかなと思ったところはさらに変えていただくなど、安達さんとディスカッションを重ねました」
五戸が、「どん底」と現代の観客をリンクさせるカギと考えているのは「生々しさ」。