第二部は『仮名手本忠臣蔵』から浄瑠璃「道行旅路の花聟」と、六段目「与市兵衛内勘平腹切の場」。浄瑠璃「道行旅路の花聟」は通称「落人」とも呼ばれる清元の舞踊だ。塩冶判官の近習と、奥方の顔世御前の文使いにきた腰元のお軽は恋仲。だが逢い引き中に主の大事件となり、屋敷へ戻れなくなったふたりが、お軽の在所の山崎へと落ち延びる、その途中の道行を哀愁とともに華やかに描く。花四天を連れた鷺坂伴内と勘平との所作ダテも見どころたっぷり。早野勘平を中村錦之助、腰元お軽を中村梅枝、鷺坂伴内に中村萬太郎。
もう一本は「勘平腹切」と呼ばれる忠臣蔵の六段目。浪人ものの遺体から五十両の入った縞の財布を手にした勘平。
六段目はここから始まってしまったお軽と勘平、そしてその家族の悲劇を描く。お軽は勘平討ち入りの金を工面するため祇園へ売られることになり、若い夫婦は別れを惜しむ。そこへ舅・与市兵衛の遺体が運ばれ、義母からは舅殺しを疑われる。また仇討の一味にも加われず、絶望から切腹をする勘平。しかしその真相は……。「色にふけったばっかりに」という名台詞と共に、白塗りの頬に血で染まった手の痕を着ける場面が哀しく美しい。代々の菊五郎が洗練を重ねた音羽屋の勘平を尾上菊五郎が勤める。