2024年3月25日 12:00
世界が注目する『パスト ライブス/再会』──“会いたかった”というひとことに込められた24年の想い。【おとなの映画ガイド】
ふたりともこの作品出演で注目された。アーサー役のジョン・マガロもインディペンデントのケリー・ライカート監督作『ファースト・カウ』で主演しているが、やはりビッグネームというわけではない。
ニューヨーク、午前四時。ノラとヘソン、そしてアーサーがマンハッタンのバーで歓談しているところから映画が始まる。男ふたりに挟まれて座るノラの通訳で会話は、韓国語になったり、英語になったり。話がはずむ再会したふたりを見ながら、どこか、居心地が悪そうなのはアーサーだ……。
“イニョン(縁)”という韓国語についてノラが話す。「摂理、または運命。
韓国人が相手を口説くときによく使う言葉なんだけど、見知らぬ者同士が道ですれ違ったときに、袖が偶然触れるのは、前世—パストライブス—でふたりの間に“縁”があったから……」。
ノラがトイレで席を立ったとき、ヘソンはあまり流ちょうでない英語でアーサーに「君と僕は“縁”があるんだ」と気まずそうにいう。
「袖振り合うも他生の縁」、日本語の辞書に載っているようなフレーズが、実はこの映画のテーマ。
「すごくシンプルに言えば、人として存在するとはどういうことかというのがテーマなんです。