2021年11月5日 12:00
『愛するとき 死するとき』インタビュー【前編】小山ゆうな「物語の普遍的な部分に光を当てられたら」
過去の2作と今回の「愛するとき死するとき」で共通する要素、小山さん自身が惹かれる共通のテーマ性などがあるんでしょうか?
共通することとしては作家の知性、知識と哲学的な“深さ”があるのかなと感じていて、いずれも若者たちの物語なので、表面的な言葉は粗野だったりするんですが、その裏には深い哲学があって、それは稽古をしていく中で感じられて楽しいですね。「そうか、ここはそういう意味だったのか」と読み解いていく作業がすごく面白いです。
もうひとつ、共通点として感じている部分があって、ドイツで「Bildungsroman(ビルドゥングスロマン)」と呼ばれる小説のジャンルがあって「自己形成小説」とでも言えばいいのかな(※日本では「教養小説」と訳されることが多い)? ヘルマン・ヘッセの『デミアン』などが有名ですが、ひとりの主人公が成長していって、自己を発見するといった小説ですが、そうした流れをくんでいる部分が『チック』にもあるし、今回の作品にもあると思います。皮肉としてこの流れを用いている部分もあるし、素直にそうなっている部分もあると思うんですが、そこはすごく面白いなと感じますね。
「“背景”が見えない」