TOKYOからEDOへ!5時間強の圧巻のエンターテインメント、木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』開幕!(コメントあり)
夜鷹として街中で客を取るおとせを演じるのは深沢萌華。奥ゆかしく、可憐な姿が余計に切ない。主の木屋文里の百両をなくし、おとせの父に助けられる十三郎は、小日向星一。オフィスカジュアルのジャケット姿は、いまの東京のどこかで働く、誠実で勤勉な部下そのものだ。ふたりが七五調の台詞をもって徐々に気持ちを高まらせる様子に、ついうっとり。和尚吉三とおとせの父、土左衛門伝吉を演じる川平慈英の芸達者ぶりも注目だ。
黙阿弥の言葉の美しさ、古典の力を再認識
振袖姿の盗賊、お嬢吉三を演じるのは坂口涼太郎。カーボンのように黒光りした振袖を纏い、楚々とした歩き方、女形独特の台詞回しで登場する。が、度々ぶっきらぼうな言葉を吐いて、不良少年らしさも大いに発揮。歌舞伎の名台詞、「月も朧(おぼろ)に白魚の──」は、お嬢吉三の一番の見せ場だが、杉原ならではの斬新で大胆、かつグッと胸に迫る演出に息を呑む。坂口は廓の場面に登場する新造花巻役でも、コミカルな演技で笑いをもたらした。
お嬢吉三とお坊吉の百両を巡る争いをおさめたのは、元坊主の和尚吉三だ。一幕では長髪姿。脛に大柄のタトゥー、肩をいからせてぐいぐい歩く様子は無敵感にあふれ、とてもクール。