2022年2月1日 16:00
高座と客席が一つになって武蔵の敵討ちを見守る5日間 神田伯山の「寛永宮本武蔵伝」連続読み【観劇レポート】
撮影:橘 蓮二提供:公益財団法人としま未来文化財団
ゆっくりと眼鏡を外し、パンパパンと張扇と扇子で釈台を叩いたかと思うとたたみかけるように語り始める。その一瞬で聴く側の脳内には剣を構えた屈強な男たちが浮かび上がり、気が付くと自分自身も果し合いの見物客になっていて……。
この人がきっかけとなって初めて講談を聴いたという人は多いだろう。今最も勢いのある講談師、神田伯山。その伯山の新春連続読み『寛永宮本武蔵伝』公演が、東京を皮切りに名古屋、福岡で上演された。伯山襲名・真打昇進後としては初めての一人で挑む連続物であり、コロナ禍のため1年延期となった待望の公演だ。期間は5日間、内容は「お楽しみ」の「前夜祭」から始まり、『寛永宮本武蔵伝』全十七話を4日間かけて語るという番組だ。
筆者が聴いたのは東京・東池袋あうるすぽっとのB日程で、お客さんは老若男女ほぼ同率に見える。
「前夜祭」の開口一番は伯山の弟子・神田梅之丞。『源左衛門駆け付け』をよく通る声で力いっぱい語った。首から顔が次第に真っ赤に染まっていく様子にこちらも思わず姿勢を正す。文楽の源太の首(ルビ=かしら)に似てシュッとしていて人気が出そうだ。