――今回は、《ゴルトベルク変奏曲》を初演したすみだトリフォニーホールでふたたび演奏するわけですが、ここ数年の間にこの作品を演奏する機会はありましたか?
いえ、2015~16年にアルバムのリリースコンサートをやって以来、全曲演奏はしていません。2018年に國本怜くん(ラップトップ、ピアノ)とヨーロッパをツアーして回ったとき、「アリア」だけプログラムに入れましたけれど。
今回は、2015年と同じ譜面で演奏しますが、サキソフォネッツのメンバーがスケジュールの都合で変わりましたし、なにより自分の身体の細胞がこの8年の間に変化しているので、かなり違う音になると思います。
◆「グッとくる瞬間」を求めて
清水靖晃&サキソノネッツ ステージ写真 (C)井上百代(Momoyo Inoue) ※2015年東京・オペラシティ公演/今回の出演メンバーとは異なります。
――清水さんは幼い頃から、ジャズやロック、歌謡曲、クラシック、ワールドミュージックなど、あらゆる音楽に触れて育ったそうですね。そのなかで、なぜ「バッハ」に惹かれたのでしょう?
クラシックの作曲家だと、ドビュッシーやラヴェル、リゲティなども好きですが、僕にとってバッハは作曲家というよりも、「御触書(おふれがき)」