その後、サキソフォネッツは2007年のアルバム『ペンタトニカ』から、4人のサキソフォン奏者を加え、「実体」をもって生まれ変わりました。そして、2010年にすみだトリフォニーホールの委嘱で、5本のサキソフォンと4本のコントラバスによる《ゴルトベルク変奏曲》を初演。5年後の2015年に同曲を録音したアルバムがリリースされたという流れです。
――作品の構造はそのままに、新たな旋律を書き加えたり、リズムを変えたりして大胆に編曲された《ゴルトベルク変奏曲》は、どのように作られていったのでしょう。
譜面をMIDIに打ち込んで、その音を何度も再生しながら、自分の旋律を加えたり、自分にはこう聞こえるという音に変えたりしていきました。MIDIファイルにすることで、曲の骨格がシンプルに見えるようになるんです。さらにリズムの捉え方を変えて、ポリリズムやミニマルのように捉えてみたり、アフリカのリズムのような躍動を入れてみたり。僕はドイツ音楽の原理的な基本というものを深く学んだわけではないので、自分が今までやってきたこと、培ってきたものでアプローチできる。
ドイツの正統とは違う、日本人だからこその自由なバッハを、尊重してみたいなと思ったんですよね。