“登山界の生ける伝説”山野井泰史が唯一無二の存在である理由。その30年を追い続けた監督に聞く。
映画『人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版』は、この題名のとおり、クライマー、山野井泰史に焦点を当てたドキュメンタリーだ。
少し説明をすると、山野井泰史は登山界では知らない人がいないぐらい著名な世界的なクライマー。世界の巨壁に単独・無酸素・未踏ルートで挑み続けている功績が認められて、昨年の2021年には、登山界のアカデミー賞と言われる登山家最高の栄誉“ピオレドール生涯功労賞”をアジア人として初めて受賞している。
いわば生ける伝説のクライマーである彼のここまでの足跡をたどる大仕事といっていい取材に臨んだのは、ジャーナリストの武石浩明監督。山野井氏と出会ってから約30年の時を経て完成させた本作について武石監督について話を聞いた。
憧れの山野井泰史との出会い
そしてマカルー西壁への挑戦へ

『人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版』
まず武石監督は自身もヒマラヤ登山の経験があり、母校立教大学の山岳部監督も務めている。つまり“山”のことをよく知る彼にとってほぼ同世代の山野井氏は憧れの存在だったという。
「私自身が登山を本格的に始めたのは大学の山岳部に入ってから。当時、山野井さんはまさにのぼり調子といいますか。