くらし情報『ヴェンダース監督・役所広司主演『PERFECT DAYS』。こんな人生もある──【おとなの映画ガイド】』

ヴェンダース監督・役所広司主演『PERFECT DAYS』。こんな人生もある──【おとなの映画ガイド】

休日はどうするのか。言葉数の少ない平山の行動と表情から、彼の生活スタイルを私たちは知ることになる。

それは、彼なりの豊かな暮らしぶりだ。仕事のあとは銭湯で一番風呂に入る。浅草のいつも行く地下の飲み屋には「おかえり」とチューハイで親父が迎えてくれるし、家へ帰ったら、じっくり厳選して買った1冊100円の文庫本が待っている。多くはないが、好きなミュージックだけを集めたカセットテープの棚もある。休日に素敵なママさん(演じているのは石川さゆり、サービスで歌も歌ってくれる)の小料理屋で飲むこともあるし、フィルムカメラで、神社の“木漏れ日”を撮ってプリントし、ブリキの缶にコレクションしていたりする。1日1日、平山にとっては同じ景色はない。


ヴェンダース監督・役所広司主演『PERFECT DAYS』。こんな人生もある──【おとなの映画ガイド】


トイレ清掃の若い同僚(柄本時生)にたずねられても、彼は自分のことを語りたがらない。飲み屋でもにこやかに飲んでいるだけ。疎遠だった妹(麻生祐未)とその娘ニコ(中野有紗)の登場で、平山の過去が見え隠れするが、やはり実情はわからない。

平山の生き方を、さまざまに解釈できるところが面白い。なぜ、この仕事をするようになったのか? 人とのつきあいが苦手なのか? そもそもひとりでいることが好きなのか? 映画をみているあいだ、いくつもの ? が頭に浮かぶ。

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