歌舞伎座で8年ぶりに上演の『あらしのよるに』 中村獅童、尾上菊之助が明かす作品への思い
「音楽で言えば長唄であり、義太夫であり、演技でいえば、踊りがあって、立ち回りがある。古典の歌舞伎の要素が凝縮されたものづくりです。でも、この作品の義太夫の語りは非常にわかりやすい。絵本の中の言葉ですから。きっと、義太夫というのは役柄の心情を語っているんだな、ということがよくわかります」とアピール。「この作品を見た子供たちがやがて成人して、また歌舞伎に戻ってきてくれれば嬉しい。今日明日のことももちろん大事ですが、我々は10年後、20年後、30年後の歌舞伎も視野に入れておかないといけない」。
「虚と実の間に真実がある」と語る尾上菊之助
また、作品の魅力について尋ねられた菊之助は、「子供から大人まで愛される作品をつくるという獅童さんの考えから作られた素晴らしい作品。
古典に取り組む中で感じているのは、虚と実の間に真実があるということ。狼と山羊のふたりに本当に友情があるのかというと、現実の世界では虚となってしまうけれど、虚実の間の友情、分断されていたふたりがこれから未来に向かって歩いていくこと──。そこに、普遍的な、大事なテーマが隠れていると感じています」と答えた。
歌舞伎座「十二月大歌舞伎」