現代能楽集X『幸福論』〜能「道成寺」「隅田川」より、世田谷パブリックシアターにて11月29日(日)から上演
旅から戻って日常に帰るけれど、以前とは景色が全く変化してしまう......これって深く理解できる感覚ですし、一つの答えにたどり着いて、再び自分の世界に帰っていく部分に心惹かれました。女が舟の渡し守に「面白く狂わなければ乗せない」と言われる場面も印象的。 やりたくてやるのではなく、試練の中に何かを発見していく姿も、よく考えると普遍的だと思いました。
――お二人とも女性が主人公(シテ)の謡曲を選択されましたが、現代的でリアルな葛藤を持つ人間の姿が浮かび上がりそうです。今回、長田さんの戯曲は瀬戸山さんが演出です。
長田:これは今、初めて言うんですけど......瀬戸山さんが演出されることを意識し、自分の中で一つ、 大きな挑戦があるんです。一人の女性の、極私的な小宇宙を書きたいと思っていて。これまで私が描いてきた戯曲は、物語や、全体を貫くテーマが先にあり、その中で登場人物たちが役割を果たしていくような構成が多かった。
でも今回は、一人の人間を中心に据えて、主人公のバーソナルな関係性を見つめて書いていく作業になりそう。
瀬戸山:私の興味の中心は「人間が二人いたらどんな力学が働くか」なので、いつも四畳半で描けちゃう世界(笑)。