若村麻由美「舞台と映画を見比べる面白さをぜひ『Le Fils 息子』でも体験して」
ラッド(『Le Père 父』『Le Fils息子』演出のラディスラス・ショラー)演出の舞台では、父親の記憶が不安定になるのに応じて、場面転換ごとにフラッシュが入り、同じ部屋でも家具が少しずつ減っていったり、演劇エリアも前方のみから、だんだん奥行きが広がっていって、最後は何もない真っ白い空間になるんです。まるで父の脳内を表すような美術と演出で想像力をかき立てられてとても面白かったです。映画だからこそ見せられる怖さとリアルさも素晴らしかったし、映画によって舞台を反芻することもできて、貴重な経験でした。
──そのゼレール作品の『Le Fils息子』を読んでみた印象はいかがですか。
ゼレールらしい人間関係の描き方と思いました。すごく濃密で、家族の想いがどんどん交差していく。自分自身のことさえ思い通りにならない状態が、リアルですね。それからシーンが次々と変わっていく映像的なところも、共通していると思いました。
『Le Père 父』は、父の認知症が進行するたびに、フラッシュすることで場面転換していくのがアートのように美しく、ゼレールの戯曲とラッドの演出の融合がとても素晴らしかったです。今回どんな演出になるのかは、まだわかりませんが、17場もあるのでどんな場面転換になるのかも楽しみです。