若村麻由美「舞台と映画を見比べる面白さをぜひ『Le Fils 息子』でも体験して」
──認知症の父を持つ娘のアンヌから、すでに別居している元夫ピエールとの間の17歳の息子ニコラを扱いあぐねる、シングルマザーのアンヌへと、複雑になりましたね。
同名のアンヌですが別人です。前回は娘。今回は(前)妻であり、母であるという点では、女性として成長した感じがあります。仕事もあって、子供への愛情も強いけど、なかなかうまく向き合えないうえに、別れた夫との問題もある。働くママたちは、たくさんのものを抱えていますよね。アンヌは元夫ピエールへの未練もあるし、息子ニコラへの愛もあるのに、すべてがうまくいかない。そしてうまくいかないのは自分のせいではないかと、自分を責め続けているんです。
ラッドも言っていましたが、ピエールとアンヌはともに弁護士なので、ロースクール時代からの長い付き合いを経て、結婚したのかもしれません。ニコラが9歳のときに親子3人でアフリカ旅行をした話が出てくるんですが、アンヌにとっては、そのころが最高に幸せだったんですね。現在はあまりにもつらく、現実逃避したくなるほどで、昔の幸せだったころの思い出にしがみついている状態です。でも、もうニコラは17歳。悩みをたくさん抱えていて、母親への態度も変わってしまった。