『カナレットとヴェネツィアの輝き』展示レポート 水の都ヴェネツィアを描いた多彩な景観画が一堂に
というジャンルを確立させたのだった。
カナレット《昇天祭、モーロ河岸に戻るブチントーロ》1738-1742年頃レスター伯爵およびホウカム・エステート管理委員会、ノーフォーク
カナレット《昇天祭、モーロ河岸のブチントーロ》1760年ダリッジ美術館、ロンドン
こうした景観画はしばしば「写真のようだ」と評されるが、実際にカナレットは当時の光学機器であるカメラ・オブスキュラを用いて、遠近法の参考にしていたという。だが、興味深いのは、実際の景色に基づきつつも、景観を画面のなかに収めたときに「絵になる」ように、意図的な操作を加えていたことだ。例えば、《サン・マルコ広場》や《サン・ヴィオ広場から見たカナル・グランデ》が描かれた場所を訪れても、同じ眺めは見られないのだとか。付近の名所を一望できるように、複数の視点から見た景観を組み合わせているからだ。
左:カナレット《サン・マルコ広場》1732-1733年頃東京富士美術館右:カナレット《サン・ヴィオ広場から見たカナル・グランデ》1730年以降スコットランド国立美術館
当時は、英国人貴族をはじめとする上流階級の人々が教育の仕上げとして、欧州の文化の中心を巡って旅するグランド・ツアーが全盛の時代。