『カナレットとヴェネツィアの輝き』展示レポート 水の都ヴェネツィアを描いた多彩な景観画が一堂に
旅の記憶を鮮明に喚起させてくれる記念品を望んだ旅行者の間で、名所旧跡を正確かつ「絵になる」ように描いたカナレットの作品は人気を呼んだ。英国人のパトロンに恵まれたカナレットは、1746年からは英国に長期滞在し、現地の景観も多数描いている。
左:カナレット《ロンドン、テムズ川、サマセット・ハウスのテラスからロンドンのザ・シティを遠望する》1750年頃個人蔵右:カナレット《ロンドン、北側からウェストミンスター橋を望む、金細工師組合マスターの行進》1750年頃個人蔵
カナレット《ロンドン、ラネラーのロトンダ内部》1751年頃コンプトン・ヴァーニー、ウォリックシャー
約50年の画歴をもつカナレットは、光と影の効果を重視する初期の作風から、青く澄んだ空や定型的な水の波紋、定規を用いて描いた堅固な建物などを特徴とする独自の画風を確立し、晩年には明部を色の点で表すことで、光の粒が画面の中で煌めくような画風も展開した。だが、ヴェドゥータを描き続けるという点では一貫していた。第2章では、様々な角度から描いた街並の作品が、年代にとらわれずに並べられている。1点1点に描かれた人々の仕草や描き方の違いをじっくり見るのも楽しいが、配布された鑑賞ガイドのマップを片手に、ヴェネツィアの名所をめぐる街歩きの雰囲気が味わえるのも同展の大きな魅力だ。