『カナレットとヴェネツィアの輝き』展示レポート 水の都ヴェネツィアを描いた多彩な景観画が一堂に
第2章展示風景
第3章に並ぶのは、カナレットの制作ぶりがうかがえる素描や版画だ。綿密に観察して描いた素描には制作用のメモなども添えられており、また素描と完成作の版画を見比べると、実景に加えた変更なども見てとれる。カメラ・オブスキュラの模型も展示されており、ぶつからない程度に頭を装置の中に入れて下部を覗き込むと、壁面のカナレットの肖像が左右反転した画像を見ることができる。
カナレット《ドーロ風景》のエッチング(1744年以降に刊行)とペン画(1740−1744年)
カメラ・オブスキュラの模型壁面のカナレットの肖像は、1735年の刊行物より
カナレットが同時代の画家に大きな影響を与え、また追随者を多く生んだことは、第4章の展示からよくわかる。カナレットの実の甥のベロットやグアルディらイタリア人のほか、英国の画家たちにもヴェドゥータは継承されている。
フランチェスコ・グアルディ《サン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂》1770年頃スコットランド国立美術館
ウィリアム・ジェイムズ《スキアヴォーニ河岸、ヴェネツィア》東京富士美術館
最後の章に登場するのは、19世紀以降の近代の画家たちだ。カナレットの影響がどこまで続いたのかという素朴な疑問に答える章だが、明らかに影響を受けた景観画家もいるものの、ロマン派や印象派など、愛するヴェネツィアを独自の視点で描いた画家が多い。