『ルイーズ・ブルジョワ展』森美術館で開催中 自身のトラウマ的体験を芸術へと昇華させた作家の葛藤の軌跡
森美術館キュレーターの椿玲子と矢作学が企画し、イーストン財団キュレーターのフィリップ・ララット=スミスが企画監修を務めた。
弟1章「私を見捨てないで」では、特に母に見捨てられることへの不安に苦しんだブルジョワが、母性の複雑さを表現した作品をたどる。父の不倫を黙認した母。20歳のとき、スペイン風邪に罹患して以来介護していた母が死去し、川への投身自殺を図るが父に助けられる。アート制作を始めたのは、自らの感情と向き合うためだった。《かまえる蜘蛛》の威嚇する姿は、我が子を外敵から保護すると同時に、脅かす存在にもなる「母性」を表す。
《かまえる蜘蛛》2003年展示風景:「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」森美術館(東京)2024年撮影:長谷川健太 (C) The Easton Foundation/Licensed by JASPAR, Tokyo, and VAGA at Artists Rights Society (ARS), New York, 2024.
一方、乳房から5本の糸を垂らす布製の人形は、惜しみなく愛情を与える母を象徴する。