矢花黎 舞台初主演、レトロモダンな世界に引き込まれるモボ朗読劇 『二十面相』が上演中
真実と嘘の境目が薄れ、観客は虚実皮膜の演劇世界に引き込まれてしまう。
(c)モボ朗読劇『二十面相』製作委員会(撮影:伊藤智美)
アマチュア推理作家で明智小五郎役の矢花黎は、初主演ながら堂々とした佇まいで真ん中にいて、シャウトしながら歌い、狂気に満ちた笑い声を響かせ、声色を巧みに使い分けながら喜怒哀楽のグラデーションを表現。二十面相の本質を暴き出そうとする野心溢れる芝居が圧巻だった。推理小説ファンと明智小五郎の助手で小林芳雄少年役の豊田陸人も美声を響かせ、コミカルな歌や踊りでコメディリリーフとして丁寧に演じていた。文芸評論家で江戸川乱歩役のカズマ・スパーキンと江戸川乱歩研究家で怪人二十面相役の栗原英雄は、バリトンボイスの渋みのある陰影のついた見事な演技。
さらに、今作を特徴づけるのは音楽。ギターやドラムなどの大嶋吾郎、ベースやバイオリンなどのあさいまりの生演奏によるセッションはクールで、時に情感豊かに表情を変えながら、大正時代の小説のモダンでレトロな雰囲気を饒舌に醸し出した。“怪人二十面相”とは何者か?その答えは提示されない。
探究心をくすぐり続ける終わりの見えない壮大な推理小説を読んでいる感覚を味わえる。