【観劇レポート】3年の時を経て上演中のミュージカル『アナスタシア』キャストの魅力に迫る
そして最後にアーニャと対峙するシーンで激しく感情を爆発させるのが圧巻だった。アニメにはなかったキャラクターであり、物語のヒール的ポジションであるグレブだが、三者ともファンタジーのヴィランではなく、歴史の中に確かにいたであろう現実味のある人物としてグレブを造形し、物語に深みを出していたことを特筆したい。
朝海ひかる、マルシア、堀内敬子それぞれのコミカルさが出た伯爵夫人リリー
マリア皇太后に仕える伯爵夫人リリー役はこれまた俳優としてのバックボーンも個性も異なる三人、朝海ひかる、マルシア、堀内敬子。ロシアでの栄光を経験しながらパリで生きる亡命貴族であり、作品にコミカルさとシニカルな視点を注入する役どころでもある。朝海は苦難を潜り抜け「どっこい、生きている」という地に足のついた力強さと、マリア皇太后へ続く道に立ちはだかる門番的厳しさも醸し出す反面、やはりこの人らしい華やかさが魅力。マルシアははっちゃけた中にも皇太后に仕える弁えもしっかり伝わる、バランスの良さがいい。三人のうちもっともコミカルだったのは堀内。抜群の芝居センスで関西のおばちゃん的な愛嬌あるリリーを造形、一方でセクシーさも存分に出し、とてもチャーミングだった。