白人と偽って生きた黒人女性の物語『Passing』。レベッカ・ホールの監督デビュー作
そんな自分のルーツについて考えをめぐらせている時に、ある友人が原作小説を教えてくれ、大きく心を揺り動かされたのだと、ホールはプレミア上映後のヴァーチャル会見で語っている。モノクロで撮影することは、早くから決めていたそうだ。理由のひとつは、「(肌の)色についての話から色を取り去ることは象徴的だと感じた」から。また、このストーリーが、白黒はっきりしているわけでなく、グレーなエリアが多いことも、このやり方が適していたという。
ふたりの女優で先に決まったのはネッガ。ネッガはクレアを選び、その後にトンプソンが決まった。ネッガとトンプソンは、女優としての経験が長いホールが現場を温かく、信頼のある雰囲気にしてくれたおかげで、のびのびと演技ができたと語っている。ホールの今後の監督としてのキャリアに期待が集まる。
文=猿渡由紀