渡邊圭祐の変わらないもの「ポリシーはない。ただ、何事も楽しく生きていたい」
を標榜する滝沢馬琴が、善因悪果/悪因善果(良い行いをした者が報われるとは限らず、悪い行いをした者がいい思いをすることもあるという考え)を唱える鶴屋南北と対立する場面は、本作ならではの見応えだ。
「僕は滝沢馬琴の考えもわかるし、鶴屋南北の考えもわかる。自分の中に両方ある気がします。というか、結果をコントロールすることなんてできなくて。だからこそ、つい後から理由をつけたくなるものなんじゃないかな、というのが僕の考え。たとえば何か悪いことが起きたときに、後から『きっとあのとき、ああしてたからこうなったんだ』って考えがちじゃないですか。でも本来そこに因果関係はなくて、人が勝手に結びつけて納得したいだけなんじゃないかなと」
その合理的な考え方は、渡邊のスマートな雰囲気にとても合っている気がした。
「結局、理想か現実かみたいな話で。
人ってそういうのが好きだから、つい論争が起きるんだと思います」
そう泰然と構える渡邊に、渡邊圭祐は現実主義者か理想主義者かと尋ねると、笑みを崩さず、さっぱりと答えた。
「どちらとも思っていないです。現実とか理想とか、正義とか悪とか、そういう事柄に対して何とも思わない性格なんだと思います。