『最後の乗客』不思議な都市伝説から始まる号泣必至のストーリー【おとなの映画ガイド】
乗せると「浜町」まで行きたいという。
映画はそんな風に謎めいた雰囲気で始まる。
実は遠藤にも、東京の大学に行ったきり、連絡ひとつよこさない娘がいる。多少心配になり、「お客さんはどちらから?」と話をむけるが、客は返事もしない。
車を走らせていると、突然、前方から子ども連れの女性(長尾純子・畠山心)が道にとびだしてきた。大事はなかったものの、そこから、車がエンストし、電波が途絶えるなど、不可思議なできごとが起きて……。
ここからはネタバレになるのでちゃんと書けないのだけれど、日常の世界でありながら、それを超越したかのような事象が起こっていく。ともすると、途中で「なんでそうなるの?」という疑問が渦巻いて、おいてけぼりを食らう気持ちになる人もいるかもしれないが、すべては結末に向けての伏線だから、受け入れながら、感性をフル回転して観てほしい。登場人物もロケ場所も少なく、55分の短さだが、濃密な時間がながれる。すでにタイトルからして、伏線なのだ。
タクシー運転手・遠藤とその娘・みずきのエピソードが、ドラマの中心になる。みずきを演じる元AKB48の岩田華怜は仙台市の出身だ。
遠藤役の冨家ノリマサは、連続テレビ小説『おしん』(1983)