2021年11月8日 19:30
孤独な地縛霊の“眼差し”通じて人間を描く『とりわけ眺めの悪い部屋』山西竜矢×湯川ひなインタビュー
みんなが会話しているシーンで、もしお客さんが夏子を見ることがあった場合に「あ、どうして夏子はいまこの人を見つめているんだろう?」って別の視点を与えられていたらいいな、と思います。セリフ以外の反応が、夏子の本質を表している気がして。
──夏子は主人公ながら、コミュニケーションを取れるのは一郎に限られています。また怒涛の長ゼリフで物語の進行役を務める“狂言回し”的な側面も担っていますし、他のキャストと求められる役割が明らかに異なっていますよね。
湯川そうですね。周りがエキサイトするぶん、夏子だけは感情的にならず、フラットな存在でありたいと考えています。その平坦なスタンスが物悲しく見えたらおもしろいのかな、と。
──いまお答えいただいたのは、山西さんの演出を受けて定まったことなんでしょうか?それとも、湯川さんご自身で考えたこと?
湯川山西さんの台本を読んで受け取った印象をもとに、私が考えました。
山西実はひなちゃんとは、役や設定について時間を設けてすり合わせをしたわけではないんです。なのに、ここまで高い解像度で夏子を捉えてくれていることが嬉しい。隣で聞いていて、僕がこの台本の中で夏子をどう表したいのか「きちんとわかってくれているんだな」