リストとショパンの絶妙リンク──阪田知樹の注目公演
ハンガリーのゲザ・アンダも同じプログラムでリサイタルをした記録があります。私も31歳の最初の挑戦としてチャレンジしたいと思います」
もちろんそこには阪田らしい意図がある。
「前奏曲集は、技術的には練習曲に匹敵するぐらい難しい楽曲ではありますけれども、音楽的に、ショパンらしい歌心のある、彼の美点が前面に出た作品です。ショパンをよく“詩人”と形容しますけれども、まさにそれがふさわしく、24篇の詩とも言えるような曲集です。曲によっては30秒ぐらいですので、詩というよりむしろ、俳句や短歌というほうがいいかもしれませんね。
練習曲集も、もちろんショパンならではの美しさに彩られていますけれども、音楽的には、技術面を追求している部分があります。1曲を通して同じテクニックに終始する曲が多く、要求されている技術もきわめて高いものですが、なおかつきわめて音楽的に演奏されなければならない。いわばピアニストとしてのショパンの、24種類の技術の展覧会のような楽曲です。
リストもそうですが、自身がピアニストとして卓越した人が練習曲を書くということは、自身の技術を集約した楽曲になるわけですよね。
そんなわけで、ショパンの音楽的な24の側面と、ピアニストとしてのテクニカルな24の側面の両方を、この48曲の小品を通じて聴いていただける。