2022年9月12日 18:00
渋谷区立松濤美術館『装いの力―異性装の日本史』をレポート 各時代の異性装の様相をさまざまな表現から展観
女性が男性の服装を、男性が女性の服装を身にまとう「異性装」は、日本ではヤマトタケルをはじめ神話の時代から数多くのエピソードや文化、芸能のなかで伝えられている。渋谷区立松濤美術館で10月30日(日)まで開催されている『装いの力―異性装の日本史』では、この異性装の歴史を紐解いていく。
人間を男性と女性の2つに区分する考え方は、私たちの認識や文化、社会制度のなかに現在も深く根付いている。そして、その区分のわかりやすい記号として、衣服の形態は男女で異なることが多くあった。そして、この男女の境界線を軽やかに越える「異性装」もまた、古来より行われてきている。
同展は、異性装を絵画や衣装、写真、マンガなどのさまざまな作品を通して、古代から現代までの異性装をたどり、「装いの力」を考察していくものだ。
展覧会は8章構成。第1章「日本のいにしえの異性装」は、神話の時代から江戸時代に至るまでの異性装の歴史を追う。
日本の異性装は、『古事記』に登場したヤマトタケルにまで遡ることができる。ヤマトタケルは九州の熊襲兄弟を討伐するため、髪をおろし、女性の装束を身にまとって宴に潜入、熊襲兄弟を討ち取った。
三代・山川永徳斎 《日本武尊》昭和時代初期個人蔵
《新蔵人物語絵巻》は、女性の身のままでは成仏も往生もできないと信じられてた室町時代の物語絵巻。