2022年9月12日 18:00
渋谷区立松濤美術館『装いの力―異性装の日本史』をレポート 各時代の異性装の様相をさまざまな表現から展観
と称されていた。女性用の甲冑は非常に貴重なものだ。
《朱漆塗色々威腹巻》江戸時代彦根城博物館蔵※前期展示のみ
第2章とは対照的に、第3章「“美しい”男性―若衆」では美しさを求められた男性たち「若衆(わかしゅう)」に注目する。一般的に、若衆は若い男性を指す言葉であるが、江戸時代には「陰間」と呼ばれる男色の対象となっていた少年や役者を意味することもあった。彼らは《納戸紗綾地菖蒲桔梗松文 振袖》のような、端午の節句ちなんだ菖蒲の柄を織り込んだ男性向けの文様とサイズの振り袖を身に着けていたという。
《納戸紗綾地菖蒲桔梗松文 振袖》江戸時代奈良県立美術館蔵
古代から続いた異性装の文化は、江戸時代に入り文化として発展していく。第四章「江戸の異性装-歌舞伎」では、室町時代から江戸時代にかけて出雲阿国が創始し、風紀取締のため客を取らず、男性のみが演者となって発展していった歌舞伎を、そして第五章「江戸の異性装-物語の登場人物・祭礼」では『南総里見八犬伝』など、異性装が登場する物語を取り上げる。
第4章、第5章展示風景より
数々の浮世絵を見ていくと、江戸時代までの日本では、異性装は実際の社会のなかでは大々的に受け入れられてはいなかったものの、物語のなかや芸能、祭礼など、限定的なかたちでは許容されていたことが感じられる。