くらし情報『巨悪相手に戦う雪姫たち。 桜満開の金閣寺を舞台に奇跡が起こる。【團菊祭五月大歌舞伎 第一部観劇レポート】』

2022年5月10日 18:00

巨悪相手に戦う雪姫たち。 桜満開の金閣寺を舞台に奇跡が起こる。【團菊祭五月大歌舞伎 第一部観劇レポート】

手を濡らさずにとってみろと東吉に無理難題をいうが、東吉は屋外の金樋をはずし、ストローのように滝の水を井戸へ注ぐ。次第に水かさが増して碁笥があれよあれよと浮いてくるではないか。碁盤を裏返しそこに碁笥を乗せて春永の首に見立て「さあどうだ!」とばかりに見得をする東吉。荒唐無稽な展開が荒事めいて楽しい場面だ。大膳は喜び、見事東吉は軍師として仕官することになる。さすがは人たらしの東吉(秀吉)だ。

一方の雪姫は大膳の刀を倶利伽羅丸と見破り、大膳が親の敵と覚るが、取り押さえられて桜の幹に縄でしばられてしまう。ここから雪姫が活躍する「爪先鼠」の場へと移る。
大膳は雪姫をすぐに殺さず、雨に濡れる海棠や桃や李の花々のように、縛られたままの姫の様子を楽しみたいというから、歌舞伎随一のサディスト大膳の面目躍如。

『金閣寺』の鮮やかな演出の数々を堪能したあとは、涼やかな『あやめ浴衣』

夫の狩野之介は六つの鐘がなると処刑されるという。身動きの取れない雪姫、でも狩野之介を助けたい。桜の花びらはとめどなく散りゆく。舞台一面が薄桃色に染まっていくにつれ、客席からはため息にも似た声があちこちから聞こえる。ふと祖父雪舟の故事を思い出し、桜の花びらを集め、涙を墨に、一心不乱に鼠を描くと、どこからともなく白い鼠が現れ縄を喰いちぎってゆく。

関連記事
新着くらしまとめ
もっと見る
記事配信社一覧
facebook
Facebook
Instagram
Instagram
X
X
YouTube
YouTube
上へ戻る
エキサイトのおすすめサービス

Copyright © 1997-2024 Excite Japan Co., LTD. All Rights Reserved.