江口のりこ、松岡茉優らが演じる、現実と理想の世界のワタシタチ
イマジナリーの世界でリヒトに甘えることはあっても、現実の世界での富子は、ひとりの作家として自らの創作に自信を持ち凛と立っている人物。ラブコメディと謳ってはいるものの、安易な恋愛至上主義に陥ってはいない点で非常に好感がもてる。
手紙を通し、直接的ではないにしろ富子を奮起させ続けてきたのが徳人。徳人の文体に対する憧れや、長年励ましてきてくれた徳人の期待に応えたいという想いが、富子に『これは愛である』を書かせたひとつの原動力になっているのだろう。演じる松尾は江口と同じ兵庫県出身。それだけに現代パートで発せられる、ふたりの関西弁はさすがの息の合いよう。どこかに恋を感じる瞬間はあったのかもしれないが、それ以上の強い繋がりを、ふたりの丁々発止のやり取りから感じられた。
ミコとリヒトを演じるのは松岡と千葉。イマジナリーの世界の住人らしい、あえて誇張された芝居が笑いを誘う。特にあざとい可愛さを生かした千葉のリヒトは、まさにハマり役と言える。実は松岡は俳優の川上丁子、千葉は現代アーティストのウンピョウというもうひと役も演じているのだが、イマジナリー側とのギャップが面白く、と同時に効果的でもある。