2023年9月22日 08:00
【ネタバレあり】松下洸平と紐解く『ミステリと言う勿れ』「朝晴の何面もの顔を見せたかった」
言葉にならないものを目と目でぶつけ合うシーンになったと思います」
強い結びつきを持つ狩集家と車坂家。そこで育った汐路らと朝晴は、限りなく身内に近い。これまでの長い関係性を壊すものだということを微塵も感じていないような顔で。
「朝晴は汐路たちを裏切ったとすら感じてないんだと思います。やってはいけないことをやっているので、責められて当然であることは本人も自覚しています。だけど、こちらにはこちらの言い分があるというのが彼の理屈です。あなたたちにわからない、僕にしかわからないものがあるんだよという気持ちを込めて、理不尽な目で僕も彼らを見つめ続けました」
松下洸平の声はウェットだ。どこか泣いているようにも聞こえる、繊細な音。
それが、聞く者の琴線を震わせる。哀れな朝晴の言葉が、いつまでも消えない跡のように、鼓膜に残り続ける。
「狩集家の人々に責められた朝晴は最後に『君らにはわからないよ』と言う。あれがなんとも悲しくて、個人的に好きな台詞です。もっと家柄や血筋のようなものから自由になれたらよかったのにと、僕は思います。でも、そういう信念にすがらないと生きていけない性分であることも理解できる。僕だって、自分で自分を鼓舞するために、根拠のない思い込みや自己暗示みたいなもので言い聞かせるときはあります。