家族で唯一耳が聞こえる女子高生の葛藤:『CODA』
今作は、2014年のフランス映画「エール!」のリメイク。へダーは自分が育ったマサチューセッツ州に舞台を据え、ルビーの両親と兄の役には全員、実際に耳が聞こえない俳優を雇った。へダーも、ルビー役のエミリア・ジョーンズも、撮影前に手話の特訓を受けている。プレミア上映後のヴァーチャル会見で、へダーは、手話の通訳はもちろんいたが、できるかぎり自分でもコミュニケーションを取りたかったし、休憩時間におしゃべりをしたりしたかったからだと語った。家のセットを作ったりする上などで、耳の聞こえない彼らからアドバイスを受けたともいう。この撮影体験は自分の人生を大きく変えたというジョーンズは、これからも手話を学んでいきたいと語っている。
今作はバイヤーの間でも強い関心が集まり、競売の結果、アップルが2,500万ドルで全世界配給権を取得した。この金額はサンダンスの歴史で最高記録。
来年度のアワードシーズンでも、早くも健闘が期待される。文=猿渡由紀