新世代のプリマ伊藤晴、新国立劇場の開幕《夢遊病の女》に登場
も出せるだろう、やってみなさい、という具合に。歌手の最大限の力を引き出してくださっていると思います。
ただ、みんなに平等に厳しいんです(笑)。フレージングひとつにも、ものすごくこだわって、『いや、それは違う!』と。でもそのこだわりが、ちゃんとロジカルで、すべて納得できることなんですね。だからマエストロがスコアの謎解きをしてくださっているような感じで、他の人のパートの稽古を聴いていても、とても面白いんです。こんな時間ってなかなかありません。
そしてすごく愛情を感じるのは、歌手一人ひとりをすごくよく見ていること。
教えていただいたことができるようになると、ちゃんと『よくなった!』と言ってくれて、アメとムチがすごいんですね(笑)。そうやって、とにかくベルカントの極意を伝えようとしてくださっている。いま、それを受け取るのに必死です」
ベルカント・オペラのレパートリーの拡大は、大野和士芸術監督就任以来の、劇場としての方針のひとつだ。
「マエストロは、ベルカント・オペラを見るときは、ドラマよりも、純粋に音楽に身をゆだねてほしいとおっしゃっていました。この作品も、ドラマ自体はシンプルなお話なんですけれども、旋律の美しさと歌手のヴィルトゥオーゾ性、声の技巧の素晴らしさや音色の表現、そういうところをお聴きいただければと思います。