吉田鋼太郎×柿澤勇人、ふたりの男が命懸けで騙し合う『スルース』は「泣ける芝居」
ところがどっこい、やってみたらものっすごい芝居でしたね! 要するにこれは、お互いを騙すことだけに、命を懸けてる男たちの話なんですよ。そのパワーがものすごいから、それがお客さんの生きるエネルギーに繋がるし、大の大人がなんでこんなバカなことを一生懸命やってんだっていう面白さもある(笑)。哀れにも滑稽にも、情熱的にも虚無的にも見える、本っ当に色んなものが入った芝居です。
柿澤面白いですよね。ふたりの男がお互いの腹を探り合いながら、言葉とは真逆のことを考えたりしながら、心理戦をバチバチ繰り広げる。僕は、鋼太郎さんによる台詞の言い回しや工夫によって、その面白さがより伝わりやすくなってるなと思います。こんなにホン読みに時間をかけた稽古は僕、初めてかもしれないです。
吉田翻訳劇につきまとう“翻訳調”を、今回はできるたけ避けたくてね。
1970年代って舞台設定を現代風に変えてることもあって、今の日本人の日常会話の言葉を目指したから。
柿澤多分お客さんも、全部のセリフがちゃんと分かるからこそ、僕らの細かい動きとか反応と重ね合わせて「言葉ではこう言ってるけど本心は?」って、それこそ“探偵”気分で探りながら観られますよね。