吉田鋼太郎×柿澤勇人、ふたりの男が命懸けで騙し合う『スルース』は「泣ける芝居」
柿澤確かに稽古の間は、何が正解かを常に考えながら、ギリギリまで探りながらやってます。でも僕、『アテネのタイモン』の時もそうじゃなかったですか?
吉田言われてみればそうだったな。俺の中では本番の記憶が強烈だから、稽古の時のことを少し忘れているのかもしれない。
柿澤腑に落ちるまで時間がかかるんですよ。やっと「こんな感じかな」って思えるようになってきた頃が、鋼太郎さんには「エンジンがかかった」「狂犬の片りんが見えてきた」って見えるのかなと思います。でも僕、そういう時でも自分が狂犬だとは全く思ってないですよ! 僕はいつだって従順な、ゴールデンレトリバーみたいな俳優です(笑)。
──では、柿澤さんから見た演出家・役者としての吉田さんの印象は?
柿澤いやもう、本っ当にとんでもない方ですよ! 演出家としては、台本を演者にもお客さんにも分かりやすくしてくれて、役としてちゃんと会話ができるようにあらゆる手を使って導いてくれて。役者としては、まだアクセルベタ踏みではないと思うんですけど、それでもやっぱり対峙した時に圧倒されるものがある。
背もそんな変わらないのにすげーでっかく感じるというか、こんなに威圧感とか重圧を感じる相手は初めてですね。