タクシー運転手がメーター押し忘れ…黙っていた乗客に法的に問題はある?
この例に関連して、最高裁の判例をご紹介します。自分の口座に誤振込みがあった場合、誤振込みを知った場合には銀行に告知する信義則上の義務があり、告知せずに預金の払戻しを受けた場合には詐欺罪が成立する、とされています(最高裁決定平成15年3月12日)。
この最高裁の判断を前提とすると、本事例においても、乗客がタクシー運転手がメーターを押し忘れていたことに気づいていたにも関わらずあえて黙っていた場合にも、乗客は、「メーターを押し忘れていることを告知すべき信義則上の義務」に違反して、詐欺罪が成立すると言えそうです。
また、民事上も、信義則上の義務に違反したとして、不法行為責任を問う余地も出てくるでしょう。
法的な責任はもちろんのことですが、タクシーの運転手さんは、私たちの日常の足として日々活躍してくれるわけですから、メーターの押し忘れに気づいたときには、速やかに指摘をし、互いに気持ちの良いタクシー利用を心がけましょうね」(大達弁護士)
「黙っていれば安くなるかもしれない」と考えてしまうのが人間というものですが、代償が発生してしまう可能性もあるようです。「押し忘れてない?」