ミステリー映画では真実が観客に示されるけど、現実ではそれは絶対あり得ない。本当は当事者しか分からないし、当事者だって勘違いをする可能性があって、僕らはそういう曖昧なところで人を罰している。だから僕は敢えて、この2作は、本当は何があったのか分からないという形で物語を考えました。それが、人が人を裁くことの難しさ、厳しさを伝えることになると思ったからです」
その後も密室で取調べる検察のシステムの問題、患者と医者と家族の理想的な関係の話から、遺された家族の描写に関する繊細なこだわり、劇中で流れるプッチーニのオペラに込められた想いなど、興味深い話題が連続。そして最後の周防監督の言葉「映画は監督のものではなく、観た人のものだ」がまた深く心に響く。「いま、みなさんがご覧になって感じたこと。それがこの映画のすべてです」。そこには、映画の本来の“想像することの楽しみ”をもっと知って欲しいという周防監督の願いのようなものまで感じられた。
『終の信託』
公開中
取材・文:イソガイマサト撮影:井出絵里奈
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