じつはこの作品、監督自らが「もっともパーソナルな作品」と語っているのだが、それは物語後半で描かれるティムと父親の関係性によく現れている。時間を旅することができる2人だが、どうしても逆らえない運命が訪れるということを描くことで、監督業からは一切足を洗い、そこにこれまで費やしてきた時間をこれからはもっと慈しみたい、という思いも伝わってくる。
また、監督らしく、この物語に登場する誰もが、悪意のないキャラクターとして描かれるのも特徴。普通、恋愛映画というと、どうしても人の嫉妬や悪意というものがどこかにひょっこりのぞいてしまうものだが、それを一切出さずして、破綻なきストーリーを紡ぎ上げる彼の才能には感服。脚本家としてはまだまだこれからも活動し続けるのでそちらはまだ楽しみだが、これで監督引退とは本当に名残惜しい。
『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』
公開中
文:よしひろまさみち
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