この映画では最初から3Dで撮影することを前提に脚本を書いたし、ストーリーボードも作成しました。iPhoneの中にストーリーボードを全部入れておいて、撮影現場ではすぐに見せて説明できるようにしたのです」。そこまでして監督が3Dにこだわったのは単に“美しい3D映画”を撮ろうとしたからではない。「もちろん、3Dではカメラに変な光やノイズが入ってしまうと観ていて頭が痛くなってしまうから、そのような部分は徹底的に修正して、頭が痛くならない3D映像にしました。しかし、私が最も興味があったのは、3Dの美しさや面白さではなく、3Dを使って“今までにない映画表現をすること”でした。そのことがずっと念頭にありましたし、そのために研究や実験もしました」。
監督の語る通り、本作では3D技術を駆使して、今までにない映像表現とストーリーテリングに挑んでいる。それは、奥行きや没入感を感じさせるだけでなく、観る者の想像力を刺激し、登場人物の感情をより深く表現するための3D表現だ。
ジュネ監督は「私の仕事は例えるなら料理のシェフのようなもの。まずは自分が食べて美味しいものを作りたいと思うし、自分を第一の観客だと思っている」