と馬場。「ただその優しさゆえに流されてしまうところもあって……。だからこそあんなことになってしまったんだと思います」と続ける。
カトリックとプロテスタントの熾烈な争いが続いた北アイルランド紛争。馬場が語ったジョンの身に起きた事件も、この激しい紛争の中で起きた事件だ。本作で重要なキーワードとなる“カトリックとプロテスタント”。この関係性を藤田は、ある舞台装置を使い視覚化しようしている。「センターステージにして、その中央にロッカーを並べようと思っています。
ロッカーに扉はないので、中を通して向こうの世界が見えるようになっていて。あと信者の数はカトリックの方が多いので、それに合わせて客席の割合も変えようかなと。そうすることで、この対立構造がよりはっきり見えるんじゃないかと思います」。
馬場はこう言う。「表面的なものだけが見えてしまうとすごくもったいない作品。その奥底にあるものをきちんと伝えていきたい」と。それが何かと言えば、大塚が語るように「この作品から持って帰るものは、人それぞれみんな違うと思う」ということなのだろう。その中でひとつ、藤田はこれを挙げる。
「人と関わる、生きていく喜び。そんなことを少しでも感じてもらえたらいいなと思います」。