だがこの戯曲では、相反する個性を持ったふたりが夢の中で激突する。
「エリザベスは大変理性的で、自らを律することができる人間。一方、メアリーはその場の感情で動いてしまうような、少し浅はかな部分もある女性です。そんなふたりの対比は、とくに女性の観客の方々にとっては働く女性の在り方や、どのように生きていくのかといったことを考えていただくきっかけになるのではないかなと思いますね」
エリザベス1世に扮するのは、多くの舞台で華々しい活躍をみせる実力派、神野三鈴だ。それぞれが女王役を演じるほかに、中谷はエリザベスの侍女に、神野はメアリーの乳母に扮して相手役と対峙する点もこの戯曲の妙味である。
「神野さんは圧倒的な存在感と、深みのある、いかようにも変化する声をお持ちの方です。多くを学ばせていただければと思っています。戯曲の上ではメアリーとエリザベスの侍女、二役が頻繁に切り替わるので、それもかなり難しい課題でしょう」
気鋭のイギリス人演出家マックス・ウェブスターによる新演出にも注目だ。
作品ごとに舞台女優の貫禄を増幅させていると感じる中谷だが、当人は「新たな作品や演出家と出会うことで、これまでの価値観はすべて壊さなければならない。