全編を通じ、登場人物たちは傍白を多用し、その分、物語の時間は圧縮され、膨大な情報量が表現されていく。観ているこちらの想像力で参加していく分、点でしかなかったものが徐々につながり、線となる。観客の想像力で事件の全貌が紡ぎ出されていく。物語の世界に参加していくと、日常の隣には異界が口を開けて待っており、静かな恐怖がそこにある、ということがわかる。と同時に、そこには「ただ生きていくこと」への喜びと愛しさを見つけることが出来る。
「語り物」に着目した作劇と、それを縦横無尽に体現していく俳優たち。熟練と瑞々しさが同居し、過不足のない絶妙なバランスでつくられた、果実のような本作。演劇の醍醐味にあふれた「秋の舞台」である。
東京公演10月4日(日)まで。大阪公演は10月9日(金)よりABCホールにて。チケットは発売中。
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