エリアフ・インバル(C)堀田力丸
代名詞とも言える精緻きわまる丁寧な音楽づくりに、自由でエモーションナルな歌ごころも加わり、鬼に金棒の風格が漂ってきたエリアフ・インバル。3月は桂冠指揮者を務める東京都交響楽団のふたつの定期演奏会を振る。
東京都交響楽団 チケット情報
3月24日(木)はバーンスタインの交響曲第3番《カディッシュ》。徴兵されてイスラエルの軍のオーケストラでヴァイオリンを弾いていた 若きインバルを見い出し、アメリカ=イスラエル文化財団に推薦して 欧州留学のきっかけを作ったのがバーンスタインだった。
「カディッシュ」は本来ユダヤ教の死者への祈り。エルサレム生まれのインバルにとっても身近な素材だ。ある時インバルは作曲者自身の《カディッシュ》のリハーサルに立ち会う機会があり、直接意見を交わすことができたという。
「この作品には、彼の人間性、信仰、平和へのねがいが息づいています」(インバル)
ヘブライ語による合唱とソプラノ独唱、そしてバーンスタイン自身が書き下ろした英語の語りを伴う大規模で劇的な作品だが、今回の語りの台本はオリジナルと異なる。
ナチ収容所の生存者であるユダヤ系ポーランド人サミュエル・ピサールによるテキストで、バーンスタインの依頼により、しかし作曲家の死後、2003年に完成、初演された。