「志ん朝さんと談志さんの『子別れ』を織り交ぜて市村版で」。さらに伝説の歌姫、エディット・ピアフの生涯を市村バージョンで、シャンソン珠玉の名曲とともに上演する。「ピアフの愛した男たちのいい曲もあるので歌いたいと思っています」。冒頭はおなじみの口上だ。「お久しぶりの近況報告と自画自賛(笑)」。そしてラストはファンお待ちかねの『俵星玄蕃』。赤穂浪士を題材にした三波春夫の名曲を、市村が完全に“自分のもの”にして歌い上げる。客席からは“おひねり”が飛ぶ、飛ぶ。
盛りだくさんで仕掛けたっぷり、サービス精神も全開。そして今回は、他界した演劇仲間へのメッセージも込めたいと語る。「蜷川幸雄さん、坂東三津五郎さん、中村勘三郎くん、彼らの思いを持って、これからも俳優人生を生きていきます。市村の芸、人となり、愛嬌、情熱をお見せして、お客様の笑顔につなげたい」。市村正親という名優は芸術に真摯で真面目、そのすべてが詰まった圧巻のステージで、変わらないパワーに触れたい。
公演は8月11日(木・祝)から21(日)まで東京芸術劇場 プレイハウスにて上演。その後、大阪、名古屋など全国5か所を巡演する。チケット発売中。
取材・文:大西美貴