栗山の合図で芝居が解かれると、見つめていた人々の深いため息が稽古場中に広がったように感じた。大竹もキムラもすぐにティッシュに手を伸ばし、涙にまみれた顔をぬぐう。栗山は舞台に上がり、フェードルの黒布をはぎ取る仕種、太陽のまぶしさに抗う表情など、自ら細かく演じてみせ、動きを提示。演出家の言葉に、大竹とキムラが笑い合う様子もうかがえた。この緩急の空気の積み重なりが、やがて骨太で直球のドラマを生み出すのだろう。まさに劇場でなければ味わえない、重量級の演劇がもたらす快感。全身で受けとめること必至である。
取材・文:上野紀子