NY育ちのスティーブン・ストバクの音楽はブロードウェイらしさで満たされ、鮮やかなナンバーが続々。音楽が贅沢で真っ当すぎて、歌詞や物語とのギャップに悶絶する!ただし、音の飛び、複雑な多重唱も多く、歌うのはそう容易くないだろう。その点、しっかり歌えるキャストが揃っているから安心だ。
何より、ダイスクイス・ファミリーの8人を演じ分ける市村正親の変幻自在さといったら!厳格な伯爵から始まり、銀行家、放蕩息子、マッチョな軍人、夢見がちな聖職者、バリバリの女優、オタクっぽい母の従兄弟、慈善活動家の女性など、目を見張る。場面によっては、一瞬で役替わり。市村の長年培われたコメディセンスが炸裂する。ウエンツ瑛士/柿澤勇人が演じるモンティは実にチャーミング。自分が名門ダイスクイス家の8番目の継承者と知り、ひょんなことから他の継承者を殺すチャンスが訪れる。
たまたまがそのうち故意になり、図に乗って次々と…。ある意味、普通っぽく、意外と観客に一番近いのがモンティといえよう。そのモンティの彼女シベラ(シルビア・グラブ)は大人の色気ムンムン。一方、モンティが婚約するフィービー(宮澤エマ)は清純で天然。この女性ふたりに挟まれるモンティの可愛さ!モンティに母親のことを教えるミス・シングル(春風ひとみ)