「ただ、今回の舞台化ではモーパッサンの原作に漂う陰惨さと、江戸の匂いがする円朝の世界観、両方の要素を取り入れようと思っています。そうすることで、時代や国を越えて人々の間にどうしようもなく“残ってしまったもの”、普遍的な人間の姿というか、そういった部分が僕なりに描けるような気がしています」と豊原。
「落語の“語り”がもつ気持ち良さは残したかったので、初めての脚本書きは大変でしたね(笑)」としながらも、「長二郎の周りの人物像を膨らませて、その背負っているものを描くことで、ひとつの物語としてまとめていきました」と内容の一端も明かしてくれた。
一方、こだわりはキャスティングにも及んでいる。これが初舞台となる森岡龍を始め、モロ師岡に梅沢昌代、花王おさむ、山本亨、高橋惠子ら、演劇・映画ファンにはたまらない顔ぶれが揃った。
「俳優って、もっともっと“遊べる”と思うんですよ。落語がそうでしょう。声の出し方やリズム、表情やたたずまいで、いくらでも作品の奥行きが広がってゆく。
この演者たちとならそれが出来るし、また、出来るんですよっていうのを観る人に知ってほしくて」と豊原は語る。「なんて、自分でハードルを上げてますけど」